【腎臓病の栄養計算】食品成分表と食品交換表はどちらがいいの?
腎臓病の食事の栄養計算のテキストには大きく分けると2つあるのをご存知ですか?
一つは「食品成分表」、もう一つは「食品交換表」です。
「この2つの違いって何?」
「医師や管理栄養士からの指示がない場合どちらを選べば良いの?」
という疑問に答えます。
結論から言うと私は「食品成分表」を使用しています。
この記事ではその理由を詳しく説明していきます。
病院によって指導方針の違いがありますので、医師や管理栄養士から指示がある場合は必ずそれに従いましょう。
食品成分表と食品交換表の違い
「食品成分表」と「食品交換表」はどちらも似たような言葉ですがどのような違いがあるのでしょうか? それぞれのメリット、デメリットなども紹介していきます。
食品成分表とは
食品成分表とは正式名称を「日本食品標準成分表」といい、文部科学省が調査、公表している日常的な食品の成分に関するデータです。 食品のパッケージなどに記載されている成分表示もこの食品成分表を参考に記載されていることが多いです。
最近は5年ごとに改訂され、2016年以降は毎年追補も公表されています。2019年現在の最新版は「日本食品標準成分表2015年版(七訂)追補2018年」になります。 次の改訂は2020年に「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」の公表が予定されているそうです。
腎臓病の食事療法では、食品ごとの分量(グラム)を計量し、食品成分表に記載されている100gあたりの成分から、計量した分量でのエネルギー、たんぱく質、食塩相当量、カリウム、リンなどを計算していきます。
食品成分表のメリット
- グラム単位で食品を計量するため、計算が正確
- 食品に含まれるエネルギー、塩分、たんぱく質、カリウム、リンなどの量を把握しやすい
- 普段から食品成分表で栄養計算していれば透析導入後の水分やリンの管理も容易
食品成分表のデメリット
- グラム単位での計量や計算が必要なため時間がかかる
- 食品成分表による栄養計算のやり方の指導を受けられる病院が少ない
食品交換表とは
腎臓病の食品交換表は、食品成分表に記載されている食品のたんぱく質量をもとに、たんぱく質を含む食品、たんぱく質を含まない食品などの大きく6つの表に分けているのが特徴です。
たんぱく質3gを1単位として、医師からのたんぱく質の指示量が何単位分になるのか計算し、各表の中から必要な単位数分摂取するように調整します。
もともと糖尿病の食事療法ではエネルギー 80kcalを1単位とした食品交換表が使われていて、その糖尿病の食品交換表の理論を腎臓病の食事療法に当てはめて作られたのが腎臓病の食品交換表です。
食品交換表のメリット
- 糖尿病の食品交換表をベースとしているため、糖尿病性腎症の方など、元々食品交換表を使って食事療法をしていた方には理解しやすい
- 6つの表の中から食品を選んでいけば良いため、食品成分表に比べると計算が簡単
食品交換表のデメリット
- 単位や表といった概念が登場するため、前提知識のない方には理解しづらい
- 単位での計算になるため、実際のたんぱく質摂取量との誤差が大きくなりやすい
- 食品成分表の食品全てをカバーしているわけではないため、交換表にない食品の計算はできない
- 食塩相当量、カリウム、リンの摂取量が把握できない
私が食品成分表を選んだ理由
冒頭でもいいましたが、私は食品成分表で栄養計算をしています。
その理由としてはただ一つで「腎臓病の食事制限は正確性が求められる」ためです。
腎臓病の食事療法は正確性が非常に重要で、たんぱく質の誤差が5g程度生じただけでも治療効果に差が出てしまうそうです。 腎臓病の食品交換表は1単位をたんぱく質3gとして計算しているため、端数は四捨五入されています。
私が以前にブログでも紹介した出浦照國先生、佐仲孜先生など腎臓病の食事療法の権威の方々も著書の中で食品成分表の使用を推奨しています。
腎臓病の食事療法の世界的権威である出浦照國先生は著書の中で以下のように述べています。
食品成分表では、食品に含まれる栄養素については100グラムあたりの含有量が小数点以下まで記載してあります。ところが食品交換表は、栄養素をおおまかに一定量ごとに単位でくくっているため小数点以下がなくなっていますから、どうしても不正確になってしまいます。一単位の誤差が小数点以下のわずかなズレでも、十単位では、誤差はその十倍になりますから、現実には誤差などというレベルではなく、大きな誤りとなってしまうのです。
おおまかな食事療法ならそれでも許されるでしょうが、とくに腎不全の患者さんに必要な低たんぱく食では、たんぱく質の一グラム、二グラムが真剣に議論されるのが通常です。それなのに食品交換表で計算すると、一グラム、二グラムどころか、五グラム、十グラムの誤差が出てしまうのが一般的です。これほど誤差が大きくなることは、正確な食事療法を真剣にやらなければならない方にとっては重大な問題です。
腎不全がわかる本 第三版 P234
せっかく栄養計算しているのに毎日5グラム、10グラムの誤差が出てしまい、治療効果が出ないのでは本末転倒です。 どうせ栄養計算をするのであれば、正確に計算したいと思って私は食品成分表を使っています。
私が参考にした出浦照國先生、佐中孜先生の書籍は以下の記事で紹介しています。
>> 出浦照國先生の「腎不全がわかる本 第三版」を読みました
>> 佐中孜先生の「慢性腎不全保存期のケア 第三版」を読みました
栄養計算は管理栄養士の指導の元、正しく行いましょう!
今回は腎臓病の栄養計算で用いられている食品交換表と食品成分表の違いと、私が食品成分表を使用している理由を説明しました。
いずれを使用する場合でも、栄養に関する知識や、計量の方法など、自己流では難しい部分もあるため、医師や管理栄養士の指導の元、栄養計算は正しく行っていきましょう。
ちなみに、文部科学省が公開している食品成分表は肉の品種や部位単位で細かく成分が記載されているため、初見の方には読み取るのが難しい場合があります。
そのため一般の方向けに絵や図を使ってビジュアルで分かりやすく表記した食品成分表の書籍が各社から販売されているので、初めての方はそういった書籍の利用がオススメです。
今回は食品成分表と食品交換表の説明がメインとなりましたが、実際に私が食品成分表を使って栄養計算をしている方法は以下の記事で紹介しています。